【今さら聞けない】簿記って何?会計士が簿記についてわかりやすく解説!

突然ですが、みなさんは「簿記」と聞いてうまくイメージできますか?

  • 「言葉自体は聞いたことあるけど…」

  • 「就職活動で有利って聞いたことあるけど…」

  • 「会社で『簿記取ったほうがいいよ』と言われたけど…」

簿記に一切触れたことない方は、仕方ありません。
でも、簿記を学習された経験のある方も、実はきちんとイメージできなかったり、うまく活用できていない方もいらっしゃると思います。

どちらにしろ、すごくもったいないことです。

実は、簿記は仕事でも日常生活でも役立つスキルなのです。

例えば…

  • 会社の経営状況がパッとわかるようになる

  • 家計管理がラクになる

  • 副業やフリーランスの確定申告がスムーズになる

このようなメリットがあるとしたら、少し興味が湧いてきませんか?

本記事では、簿記を全く知らない方にもわかりやすく、「簿記とは何か」「どんなことに役立つのか」を丁寧に解説していきます。

簿記は「数字に強い人」や「経理の仕事をしている人」だけのものではありません。

簿記を学ぶメリットを知れば、きっと「もっと早く知りたかった…」「自分も簿記勉強してみようかな」と思えるはずです。

ぜひ最後までご覧ください!

簿記とは

まず簿記とは、会社が日々行う取引を帳簿に記録して計算、整理することをいいます。

たとえば、みなさんが何かモノを買った時、給料日に入金があったことを記録する時など、日々の収入や支出、入金や出金の際に家計簿をつけると思います。これは、会社の場合も同様。

**商品の販売、材料または部品の仕入れ、備品の購入、従業員への給料・ボーナスの支払い、銀行からの借入など、**様々な取引を日々行なっていますよね。

これらの取引について帳簿にまとめないと、会社がどれぐらい売り上げや仕入れがあったか、どれぐらいお金を使ったかがわからなくなってしまいます。

したがって、これらの取引を記録し、一定期間ごとに決算を行い、報告書にまとめる作業、つまり簿記が必要になります。

簿記の歴史

簿記の起源は、紀元前27年ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスにまで遡ります。

彼は、自らの財政状況を記録し、その実績を政治的正統性や功績として外部に示すため、初歩的な帳簿(=単式簿記)を使用していました。この事実は「神アウグストゥスの業績録」という記念碑にも記されています。

その後、簿記の発展は長い間停滞しましたが、古代メソポタミアやギリシャ、ローマで少しずつ進化を遂げ、中世イタリアで現在の形である複式簿記が誕生しました。

特に1494年、ルカ・パチョーリが「スムマ」という著書で複式簿記を体系化したことで、資本主義経済における重要なツールとして広く使われるようになりました。

日本では明治時代に西洋式簿記が導入されます。

1873年(明治6年)福沢諭吉がアメリカの簿記テキストを翻訳した『帳合之法』を出版したことが、複式簿記普及の始まりとされています。

また、福沢諭吉は簿記教育の場として簿記講習所を創設し、実学(実用的な学問)の一環として簿記を広めました

同年、大蔵省も『銀行簿記精法』を刊行し、銀行や実業界で複式簿記が普及していきます。

かつて簿記は、ローマ時代では財政の管理や統治のために使われ、利益や資本の概念は重視されていませんでした。

しかし、資本主義の発展とともに、企業経営において資本や利益を管理・分析する必要性が高まり現代ではビジネスに欠かせないツールとして活用されています。

簿記の歴史は複雑で多面的ですが、その根本には「お金の流れを正確に記録し、整理する」という変わらない目的があるのです。

簿記の主な目的

簿記の主な目的については、以下の通りです。

①企業活動の記録

「1. 簿記とは」にもある通り、会社の日々の活動や取引を正確に記録すること。これにより、お金の出入りや取引の状況を把握することができます。

②決算書の作成

簿記の最終的な目的は、会社ごとに決算書という、会社の財産の状況(=財政状態)や業績(=経営成績)をまとめたものを作成することにあります。決算書は会社にとって非常に重要な書類で、主に以下の目的で作成されます:

  • 会社の1年間の活動記録:上述の財政状態や経営成績を、1年ごとに明確にして把握するため。

  • 社内の報告用資料:特に大企業において、経営者や役員に対して財政状態や経営成績を報告するため。

  • 利害関係者に対する基礎資料:株主や取引先、融資を行っている銀行など、第三者に対して報告するため。

  • 税務申告のための基礎資料:会社が税金を支払う際に、支払額を決定させるベースとなるため。

③第三者による理解の促進

「②決算書の作成」に登場した利害関係者以外にも、その会社に関心がある第三者(みなさんのようなサイト閲覧者など)に対して財政状態や経営成績を理解してもらえるよう、簿記のルールに従って記録することが求められます

簿記のルールによらない場合、この会社はどのように記録しているか疑問が湧きますし、理解もしづらいですよね。

④コスト管理と財務分析

簿記の知識を活用することで、会社のコスト管理や財務分析が可能になります。これは、経営判断や業務改善に役立ちます。

なお、財務分析は様々な手法がありますが、当記事は簿記をテーマにお伝えしたいので、また別の記事で取り上げようと思います。

  • 経営判断の基礎となるデータを提供し、業務改善に役立ちます。

簿記の基本

簿記の基本的な流れ

簿記の基本的な流れについては、以下のようになっています。

  • 各取引を勘定科目に振り分け、仕訳を行う。

  • 仕訳した内容を、総勘定元帳の各勘定へ転記する。

  • 総勘定元帳を集計し、試算表を作成する。

  • 決算書を作成するため、決算整理を行う。

  • 決算書(貸借対照表・損益計算書)を作成する。

順番にみていきましょう。

Ⅰ. 各取引を勘定科目に振り分け、仕訳を行う

まずは「取引の内容」を記録する必要があります。

たとえば、会社で商品を仕入れたり売上をもらったりするたびに、「何があったのか」を整理、その内容を**「勘定科目」という形でカテゴリーに振り分けます**。

  • 商品を買った → 「仕入」

  • 商品を売った → 「売上」

  • お金を払った → 「現金」

Ⅱ. 仕訳した内容を、総勘定元帳の各勘定へ転記する

仕訳を行ったら、仕訳した情報をまとめて管理する必要があります。

仕訳帳に記録した取引を、科目ごとに分けて大きなノート(=総勘定元帳)に書き写すことで、どの勘定科目でいくら動いているかがひと目でわかるようになります。

Ⅲ. 総勘定元帳を集計し、試算表を作成する

全体の数字をチェックするため、総勘定元帳の内容を集計して、「貸したお金」と「借りたお金」の合計が一致しているか確認します。

この確認のために作る表が「試算表」です。

Ⅳ. 決算書を作成するため、決算整理を行う

決算書を作る準備として、1年間の取引内容を見直して、「期末の在庫を計算する」「減価償却費を記録する」など、必要な調整を行います。

Ⅴ. 決算書(貸借対照表・損益計算書)を作成する

会社のお金の状況と成績を、以下の「貸借対照表」と「損益計算書」にまとめる作業を行います。

  • 貸借対照表:1年間の最終日時点(=決算日時点)での資産、負債、純資産を示し、会社の財政状態を表すもの。会社のお金やモノがどう使われているかをまとめます。

  • 損益計算書:1年間の売上や原価、収益、費用を集計の上、利益や損失を計算し、会社の経営成績を表すもの。年間でどれだけ儲けたか、または損したかをまとめます。

簿記の基本的な流れをまとめると、このような流れになります。

  • 取引を記録する(仕訳)

  • 記録をまとめて整理する(総勘定元帳)

  • 全体の数字を確認する(試算表)

  • 必要な調整をして(決算整理)

  • 会社の成績表(決算書)を作る

簿記=お金の流れを正確に整理して、会社の状況をわかりやすくするツール」と考えるとイメージしやすいですね。

簿記の種類

「簿記の種類」といわれると、主に以下の2つの分類にイメージされることが多いです。

  • 記帳方法による分類:単式簿記複式簿記

  • 取引種別による分類:商業簿記工業簿記

ここでは、この2つの分類についてお話ししたいと思います。

Ⅰ. 記帳方法による分類:単式簿記と複式簿記

単式簿記は、お金の増減だけを記録する方法です。

シンプルな家計簿みたいなもので、お金が「増えた」「減った」だけを記録します。

例:

  • お金をもらった →「現金が〇円増えた」と記録。

  • お金を使った →「現金が〇円減った」と記録。

メリット:

  • 記録が簡単でわかりやすい。

  • 家計簿レベルではこれで十分な場合が多い。

デメリット:

  • 「なぜお金が増えたのか」「何に使ったのか」を詳しく把握することができない。

  • 企業活動を細かく分析したり、財務状況を把握するには不十分。

一方、複式簿記は、取引の動きとお金の動きの2つの視点に分け、両方とも記録します。

「お金が何に使われたのか」「お金がなぜ増えたのか」(=原因)と、「お金がいくら残っているのか」(=結果)の両方を記録するので、あとからお金の動きを正確に把握、追跡できるようになっています。

例:

  • 現金が〇円増えた。

  • 同時に、「売上が〇円増えた」と記録。

メリット:

  • お金の流れを正確に把握できる。

  • 企業の財務状況や利益を詳しく分析できる。

  • 会計基準に適合し、決算書が作れる。

デメリット:

  • 記録が複雑で手間がかかる。

  • 簿記の知識が必要。

単式簿記と複式簿記の違いをイメージすると…

特徴単式簿記複式簿記
記録の内容お金の増減だけお金の動きの原因と結果をセットで記録
使う場面家計簿会社や組織の経営管理
利便性簡単で手間がかからない詳細な分析や財務管理が可能
会計基準への対応不適合適合

Ⅱ. 取引種別による分類:商業簿記と工業簿記

商業簿記とは、お店や会社のお金の動きを記録する簿記です。

たとえば、以下のような取引を管理します。

  • 商品を仕入れる(買う)

  • 商品を売る

  • お金を借りたり返したりする

つまり、会社やお店が普段行う「売り買い」や「お金のやり取り」を記録して整理するのが商業簿記です。

また、商業簿記は以下の場面で使われます。

  • 小売店やサービス業など、モノやサービスを売っている企業

  • 会社の全体の「お金の流れ」を把握したいとき

一方、工業簿記とは、モノを作る工場などで使う簿記です。

たとえば、工場で「製品を作るために、どれだけお金がかかったか」を、以下のように細かく計算して管理していきます。

  • 材料費(原材料を買うお金)

  • 人件費(作業する人のお給料)

  • 製造にかかった機械や設備の費用

これらを計算して、「製品1個あたりにかかったコスト」を明らかにするのが工業簿記の役割です。

工業簿記は、以下の場面で使われます。

  • 製造業や工場など、モノを作る企業

  • 製品を作るのにどれだけコストがかかっているか分析したいとき

まとめると、

特徴商業簿記工業簿記
目的商品やお金の「売買・やり取り」を記録し、会社全体の財務状況を把握する製品を作る過程で発生するコスト(材料費・人件費など)を管理・計算する
対象商品の仕入れ、販売、経費、収益など製品を作るために使った材料や労働力、製造コスト
使う場面小売業、卸売業、サービス業など製造業、工場などモノを作る企業
記録の内容「お金の出入り」や「会社全体の利益・損失」「製品1個あたりのコスト」や「どの工程にいくらかかったか」
方法の違い主に複式簿記を使って記録工業簿記の中でも「原価計算」という専門的な手法を使う
メリット・会社の全体像を把握できる ・売上や利益を確認しやすい・コスト管理が細かくできる ・どの部分にコストがかかりすぎているか分析できる
- 商品を100万円で仕入れて、150万円で売るときの売上や利益を記録- 製品1個を作るのに、材料費500円+人件費300円+その他200円かかると計算

簿記検定について

簿記検定とは

簿記検定とは、「お金の流れを記録・整理・分析するスキル」を証明する資格試験です。

会社や個人事業主がお金を管理するために欠かせない知識で、特に経理・財務に関わる職種では必須とされています。

簿記検定の種類

簿記検定にはいくつかの種類がありますが、代表的なものは以下の3つです。

資格名主催団体特徴
日商簿記日本商工会議所- 簿記資格の中で国内最大規模。 - ビジネスにおいて重要な簿記スキルとして証明可能。 - 1級を有する場合、税理士試験の一部科目が免除される。
全経簿記 (全国経理教育協会)全国経理教育協会- 実務向けの資格として評価されている。 - 上級レベルを有する場合、税理士試験の一部科目が免除される。
全商簿記 (全国商業高等学校協会)全国商業高等学校協会- 主に高校生向けの検定試験。 - 商業高校や学生がスキルを証明するために受験することが多い。

上記の中でも、国内最大規模といわれるのが日商簿記です。

日商簿記は、ビジネスにおいて重要な簿記スキルを証明する有用な資格として広く認知されています。

もし、これから簿記を勉強しようという場合は、日商簿記がおすすめです。

簿記資格についてさらにわかりやすく比較している記事もあるので、よければご覧ください!

関連記事 【もう迷わない!】簿記資格をわかりやすく比較!全経簿記・全商簿記・日商簿記、結局どれを受ければいいの?

簿記の知識はみんな持っておいてほしい

これまでは、ビジネス面でお金を管理するために欠かせない観点でお話ししてきました。

一方、簿記資格を取得することで、仕事の幅が広がるだけでなく、家計管理や副業などでも活用できるんです。

ここでは、ビジネス面ではもちろん、日常生活面でも簿記の知識を使うメリットについてお話ししていきます。

ビジネス面でのメリット

①業務の幅が広がる

経理や財務の仕事に直結するスキルだけでなく、営業や総務でも**「数字に強い人」として評価され、業務の幅が広がります**。

営業であれば財務状況の分析営業戦略の立案・改善などへ、総務であれば管理業務への応用などへ、簿記は大変役に立てることができるからです。

また、職種に関わらず、社内会議やクライアントに対するプレゼンテーションの場でも、数字で表した資料の方が積極性を持たせることもできます。

②転職や就職に有利

①に関連して、簿記は経理や財務だけでなく、営業や総務など幅広い職種に役に立ちます。

そのため、多くの会社でも**簿記資格を有する人は重宝される傾向にあり、**ましてや入社してくる従業員に簿記資格があればなお嬉しいものです。

③キャリアアップに役立つ

決算書が読めるスキルは、経営層に求められる能力の一つでもあります。

簿記資格を有している場合、社員だけでなく、管理職や経営に近いポジションでの仕事に役立ちます

④財務状況を分析できる

簿記の知識があれば、会社の決算書を読んで、経営の状況を把握したり改善点を見つけたりできるようになります。

日常生活面でのメリット

①家計管理の質が向上する

日々の支出と収入の記録に簿記の考え方を取り入れることで、収支のバランスを正確に把握できるようになったり、貯金と借金のバランスが明確になります。

そのため、無駄遣いを減らして貯蓄率が上がり、また将来の資金計画を立てるのに役に立つようになります。

②副業やフリーランスで役立つ

副業やフリーランスで働く場合、会社と同様、収支や資金の管理が必要です。

簿記を学んでおけば、これらをスムーズに進めることができます。

③税金や納税額控除の仕組みがわかる

少し応用的な話になりますが、毎年どのご家庭も、ほぼ必ず確定申告をすると思います。

簿記を通じて税金や経費の仕組みを学べば、税額控除を最大限活用したり、納税額を正確に計算する力がつきます。

④投資や資産運用の基礎が身につく

株式投資や資産運用の判断材料として投資先企業の決算書が活用されますが、これを読むスキルが求められます。

簿記の知識があれば、投資先企業の経営成績や財務状況を理解でき、より賢明な投資判断を行うことができるようになります。

5. まとめ

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

簿記は「難しそう」「専門的すぎる」と思われがちですが、実は日々の生活や仕事の中でとても役立つスキルです。

お金の流れや数字を正しく理解できるようになると、家計管理がラクになったり、仕事での評価が上がったり、さらには将来の資産形成にも大きく活かせます。

最初の一歩は、簿記の仕組みをざっくり知るところから始めればOKです。

もしこの記事を読んで、「簿記を少し学んでみようかな」と思っていただけたらうれしいです。